【逸失利益】と【機会損失】の違いとは?例文付きで使い方や意味をわかりやすく解説

逸失利益と機会損失の違い難易度 3

逸失利益と機会損失の分かりやすい違い

逸失利益と機会損失は、ともに何らかの事情により、得られるはずだった利益を失うことを指しますが、その原因と法的な位置付けが異なります。

逸失利益は、主に債務不履行や不法行為など、他者の違法な行為によって生じた損害であり、法的に賠償の対象となります。一方、機会損失は、主に自己の判断や市場環境の変化などによって生じた損失であり、法的な賠償の対象とはなりません。

逸失利益が他者の責任に帰すべき損害であるのに対し、機会損失は自己の責任において発生する損失だと言えます。また、逸失利益は、具体的な金額の算定が求められるのに対し、機会損失は、得られたかもしれない利益の推定にとどまる点も異なります。

逸失利益とは?

逸失利益とは、債務不履行や不法行為など、他者の違法な行為によって生じた損害のうち、得られるはずだった利益を失ったことによる損失を指します。例えば、契約の相手方が約束を守らなかったために、事業機会を逸した場合の利益の損失が逸失利益に当たります。

逸失利益は、民法上の損害賠償の対象となります。ただし、逸失利益の賠償を請求するためには、その損失が相手方の違法行為と因果関係を有すること、および、損失の発生が相手方にとって予見可能であったことが必要とされます。また、逸失利益の算定においては、得られるはずだった利益を具体的に示す必要があり、単なる期待や希望では不十分とされます。

逸失利益の算定は、業種や事案によって異なりますが、過去の実績や業界の平均値などを参考に、合理的な範囲で行われます。

逸失利益の例文

  • (1) 工事の完成が遅延したために、テナントからの賃料収入を逸した建物オーナーは、逸失利益の賠償を請求した。
  • (2) 部品の納入が遅れたために、製品の販売機会を逸した製造業者は、逸失利益の賠償を求めて訴訟を起こした。
  • (3) 不当な解雇によって、昇進の機会を逸した社員は、逸失利益の賠償を求めて交渉に臨んだ。
  • (4) システムの不具合によって、オンラインショップが長時間閉鎖を余儀なくされ、逸失利益が発生した。
  • (5) 著作権侵害によって、本来得られたはずのライセンス収入を逸した作家は、逸失利益の賠償を請求した。
  • (6) 不当な取引制限によって、新規事業の展開機会を逸した企業は、逸失利益の賠償を求めて提訴した。

逸失利益の会話例

工事の遅延によって、テナントからの賃料収入を逸してしまいました。逸失利益の賠償を請求したいのですが、どのように進めればよいでしょうか?
まずは、工事の遅延が相手方の責任である証拠を整理し、逸失利益の具体的な金額を算定する必要があります。その上で、相手方に対して、損害賠償の請求を行うことになります。
部品の納入遅延によって、製品の販売機会を逸しました。逸失利益の算定はどのように行えばよいでしょうか?
逸失利益の算定には、過去の販売実績や、同業他社の販売データなどを参考にします。また、販売機会の喪失と部品の納入遅延との因果関係を明確に示す必要があります。専門家の助言を得ることをお勧めします。
不当な解雇によって、昇進の機会を逸したと考えています。逸失利益の賠償を求めることはできますか?
昇進の機会の喪失が、不当解雇と直接の因果関係を有することを示せれば、逸失利益の賠償を求めることは可能です。ただし、昇進の可能性や、それによって得られたはずの利益を具体的に立証する必要があります。

機会損失とは?

機会損失とは、ある選択をしたために、他の選択肢から得られたかもしれない利益を失うことを指します。つまり、機会損失は、実際に発生した損失ではなく、得られる可能性のあった利益を比較した場合の差額を示す概念です。

ある投資案件に資金を投じたために、他の有望な案件に投資できなかった場合、後者の案件から得られたかもしれない利益が機会損失に当たります。機会損失は、意思決定の際の判断基準として用いられることが多く、経済学や経営学の分野で重要な概念とされています。

機会損失は、あくまでも可能性の問題であり、実際に損失が発生したわけではありません。したがって、機会損失は、法的な賠償の対象とはなりません。機会損失を 最小化する意思決定を行うためには、さまざまな選択肢を比較検討し、最も有利な選択を行うことが求められます。

機会損失の例文

  • (1) より高い利回りの投資案件を選択しなかったために生じた、得られたかもしれない収益の差額は機会損失である。
  • (2) 自社の技術を特許出願しなかったために、他社に先を越されて市場を失った場合の損失は機会損失と言える。
  • (3) 有望な人材を採用できなかったために、競合他社に優秀な人材を獲得された場合の差は機会損失である。
  • (4) 新商品の開発に注力するあまり、既存商品の販売機会を逸した場合の損失は機会損失と考えられる。
  • (5) 原材料の仕入れを安価な海外サプライヤーから行わなかったために、コスト削減の機会を逸した場合の差額は機会損失である。
  • (6) 新市場への参入を見送ったために、その市場の成長による利益を得られなかった場合の差は機会損失と言える。

機会損失の会話例

新しい投資案件に資金を投じましたが、他の案件を選択した方が良かったかもしれません。機会損失が大きいのでは?
確かに、他の案件から得られたかもしれない利益と比較すると、機会損失は大きいかもしれません。ただし、機会損失はあくまでも可能性の問題であり、実際の損失ではないことを忘れてはいけませんね。
自社の技術を特許出願しなかったために、他社に市場を奪われてしまいました。機会損失としてどのように評価すべきでしょうか?
特許出願をしていれば、独占的な市場を確保できた可能性はあります。その意味では、機会損失は大きいと言えるでしょう。ただし、特許出願に必要なコストや、特許取得の可能性なども考慮する必要があります。
有望な人材を採用できなかったために、競合他社に優秀な人材を獲得されてしまいました。機会損失をどのように捉えるべきでしょうか?
優秀な人材を獲得できていれば、事業の成長スピードは加速できたかもしれません。その差が機会損失と言えます。ただし、人材獲得競争は常に起こり得ることであり、一概に機会損失と決めつけることはできませんね。

逸失利益と機会損失の違いまとめ

逸失利益と機会損失は、ともに得られるはずだった利益を失うことを指しますが、その原因と法的な位置付けが異なります。

逸失利益は、主に他者の違法な行為によって生じた損害であり、法的に賠償の対象となります。一方、機会損失は、主に自己の判断や市場環境の変化などによって生じた損失であり、法的な賠償の対象とはなりません。つまり、逸失利益が他者の責任に帰すべき損害であるのに対し、機会損失は自己の責任において発生する損失だと言えます。また、逸失利益は具体的な金額の算定が求められるのに対し、機会損失は得られたかもしれない利益の推定にとどまります。

両者は、ビジネスにおける意思決定や損失評価の際に考慮すべき重要な概念ですが、その性質と取り扱いは大きく異なると言えるでしょう。

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